この回は専門的な話や経営の話がメインになるので、一般の方からしたら意味不明な表現が多いと思いますので、興味があるかたのみがお読みいただければと思います。

金、プラチナは分析精錬の過程で100%回収はできない。

まず18金(純度75%)の買取り価格75%がありえないかですが、再販不可能な地金タイプの金、プラチナ、シルバーネックレスやリングは分析再精錬で純金(k24)・純プラチナ(pt1000)・純銀(SV1000)のインゴットや工業用や加工用の板材等の材料になるわけですが、その分析再精錬の過程で金を100%回収するのが不可能だからです。

これは当社のように宝石貴金属の製造業者や宝飾業界に長年携わっている人から見たら当たり前の事実です。

一例としてネックレスやリングは必ずつなぎ目があるのですが、そこを溶接するとき通常のK18でなく合金部分を溶けやすい素材に配合した物を使用して、それを接合剤として利用します。細いタイプの場合K18より純度を落としてK16やK14で溶接する場合もあり当然そういったネックレスだと分析再精錬すると74.5%以下しかK18のネックレスから金を回収できないことは普通にあります。

さらに

当然ですが、この分析再精錬は無料で自動的にできるものではありません。ちゃんとした設備と人の手により可能なことです。当然そこにはコストが発生します。それがK18を75%で買取っていたら間違いなく赤字です。これは分析再精錬をする設備を持っている会社でも同様でしょう。

確かに金やプラチナは為替のように小売と買取りの間にスプレッドが存在していますしK18は合金として残りの25%銅や銀が使われており、それを回収すれば粗利的には赤字にならないかもしれませんが、銀は1グラム 70円程度、銅にいたっては1グラム1円以下です。

当然材料小売にも人件費や在庫を持つための諸費用がかかります。なので18金を75%で買取っていたら粗利的に銀や銅の分が金のヘリをカバーして材料材を卸すことにより粗利面では赤字にはならないかもしれませんが、粗利1%を切るレベルでしょう。当然その利益では人件費や設備費等の経費は賄えないでしょうから経常利益としては大赤字確実です。

これはネットジャパンや日本マテリアルのような数十キロ単位で大量に集めてまとめて分析再精錬することにより回収率を上げている商社の話です。それが失礼な話、たかが1店舗から数店舗の買取り専門店にその価格で買取りすることができるでしょうか?しかも一般の方を相手にする場合、テナント料金や宣伝広告費、人件費、その他諸経費が商社以上にかかります。

大した量ではない分析再精錬では回収率が74.7%を超えるとこすらあまりないからです。当然75%きっかり回収できた事は過去一度も当社ではないです。

そこで分析再精錬工賃を支払って、K18棒材にしてもらう工賃を払うより、お客様から買取ったり材料として下取りしたk18はそのまま商社に売ってその後売ったお金で改めて材料を商社から買ったほうが分析再精錬するより支払う価格が低くなるというありえない状況だからです。

通常貴金属買取りの80%は再精錬しか道がない地金タイプ

これも買取りのうち中古として再販可能なジュエリー製品が買取りのメインだったら再精錬する必要もないでしょうし、業者価格で買取ることも不可能ではないと思います。

しかし、当店も長年金、プラチナの買取りをしているので良くわかるのですが、お客様から買取るうち80%以上は再販が不可能な地金タイプのキヘイなどのネックレスやリング等だからです。

キヘイも今は昔ほど人気がありませんし、この手の地金系のネックレス(マシーンチェーンと業者では言っています。)は新品で仕入れても非常に安いグラム単価で仕入れられるので通常中古を手間暇かけて新品磨きして在庫で抱えることはありませんし、その他も同様です。

これは一番ジュエリーが売れていた3兆円市場だったバブルの頃流行ったジュエリーがこういうタイプが多くて今よりもデザイン的にかなり劣るからです。

仮に買取っている商品の80%が利益ゼロでやって、残り20%で利益を稼ぐとしてもそういうのは経営的にはありえない話です。

業者価格の粗利益率がわかればそれを一般のお客様相手の小売業がそのビジネスを可能にするには年間数百億円規模の取引が必要です。そんな規模を一般のお客様相手に実現可能なのはリタナカ様ぐらいでしょう。そのリタナカ様ですら粗利10%前後はリサイクル貴金属では利益を取っているのです。そもそも業者価格で小売業が経営的に成立するならネットジャパンや日本マテリアルが小売業をするはずです。以上が目減りなし、手数料なしで、重量のごまかし等なしで一般のお客様相手の買取店等が業者価格で買取ることがありえない理由です。ただ残り20%の製品買取りで利益を取って運営している業者が絶対存在しないとは言えないので全ての「業者価格で買取ります」買取店がそうだとは言いません。これはお客様自身で重量を計量したうえでご確認いただければと思います。

(敬称略) 
(last update 20130927)

2013年に店主が本音で書いたお役たち貴金属買取コラム

  1. 金、プラチナ、シルバー製ジュエリー買取の歴史
  2. 貴金属買取店のビジネスモデル
  3. 金、プラチナ買取業界の黒船。リタナカの参入
  4. 業者価格とは?
  5. 業者価格で買取りますのカラクリ
  6. 何故業者価格で買取るが不可能か