ジュエリー業界も医学と同様に日進月歩進化し続けています。合成ダイヤモンドがとうとうデビアス社から販売されたり、パライバトルマリンやパパラチアサファイアなどの希少宝石が大流行を見せたりと、様々なニュースが駆け巡っている昨今。

今回はそんな中でも新しく日本で開発された金属についてピックアップ。その名もコバリオン、メイドインジャパンの新金属コバリオン、いったいそれはどのような金属なのでしょうか?

<h1>東北大学で開発された新メタルコバリオンとは?</h1>

新世代という言葉をよく耳にしますが、今回ご紹介するコバリオンも新世代と形容される新しい金属です。保守的な私たち日本人ですが、意外と新しい物好きで新製品の開発にも熱心な模様。

さあ噂のコバリオン、果たしてどんな特徴を持つ金属なのか、ここで皆さんに新世代の金属コバリオンの魅力をご紹介していきたいと思います。

<h2>医療用金属として新たに開発されたのがコバリオン</h2>

コバリオンは東北大学金属材料研究所によって開発され金属です。元々は脊髄側弯症治療に用いる新素材として開発された背景があることからわかる通り、非常に強い強度と延性、耐摩擦性、耐腐食性を誇る新素材。

コバリオンの組成はコバルト、クロム、モリブデンから成る、コバルトクロム合金です。柔軟な加工性を見せ、ニッケルをほとんど含有していないも関わらず、優れた加工性があることから、現在は歯科用金属、人工関節などに導入されています。

夢の金属とも形容されるコバリオンは、その開発から製造まで全てを日本国内で行っており、製造元は釜石市の株式会社EIWAが行い、いわて産業振興センターにより商標登録が行われています。

<h3>コバリオンの特徴</h3>

ここで簡単にコバリオンの特徴をまとめてみると、

  • 高い強度と加工性
  • 腐食性がないため、変色の心配もない
  • 磨けば磨くほど、プラチナ様の輝きを見せる
  • 医療用金属としての加工性に優れている
  • 純国内生産で他の金属と比べても製造コストが低く、大量のロットにも柔軟に対応可能
  • 硬い割にその手触りはソフト

などが挙げられます。

<h2>金属アレルギーの心配がない魔法の金属</h2>

コバリオンはつまり生体材料に適していることからもわかる通り、ジュエリーを付けたくても付けられない、そんな金属アレルギーがある方の地銀としても利用可能なのです。

アレルギーが少ない金属としてタンタルやチタンなどのレアメタルなどがありますが、それらと同様に、コバリオンの金属アレルギー発症率は著しく低いことが分かっています。

<h3>プラチナやチタンよりも低いアレルギー発生率</h3>

ジュエリーに加工される地金は様々な金属を混ぜ合わせた合金を利用、またはメッキを利用していますが、その段階でニッケルが付加されることは少なくありません。コバリオンは金属アレルギーを誘導しやすいニッケルの量を極限まで少なくしているため、その金属アレルギー発生率は金やプラチナ、チタン以上に低いのです!

ちなみに金属アレルギーの誘発率は、陽イオンのなりやすさを示したイオン化傾向によって示され、ニッケルや水銀はイオン化しやすい=金属アレルギーになりやすく、金やプラチナなどイオン化傾向の低いものは金属アレルギーの心配が少ないということも覚えておきましょう。

何かを語る上で絶対という言葉は使ってはいけませんが、人工関節や矯正ワイヤー、全部・部分床義歯などに多用されることからも、その高い安全性は折り紙付き。

七色に輝く酸化被膜が美しいレアメタルによるジュエリーも素敵ですが、プラチナ同様の審美性、徹底的に抑えた金属アレルギーの発症率、シンプルでありながら安全性が高いコバリオン、金属アレルギーに悩まされている方の地銀選びの選択肢としては申し分ありませんね。

<h2>ジュエリー業界に与えたインパクト大!今後のジュエリー市場で存在感を示せるのか?</h2>

地銀としてのコバリオンの魅力はなかなか優秀ですが、果たして第二のプラチナとして今後普及していきのでしょうか?ここではジュエリー加工という面から、コバリオンのこれからの可能性について考えてみたいと思います。

<h3>ジュエリー加工におけるメリットとデメリット</h3>

これはコバリオンに限ったことではありませんが、金属アレルギーの心配がほとんどないレアメタルと同様に、コバリオンの加工には専用の機器が必要になることもあり、ジュエリー業界で重視される加工のし易さという側面では不利かもしれません。

ただ硬度がシルバーの4倍ほどで、逆に考えれば、プラチナ同様の輝きを楽しみながら、なおかつ傷が付きにくいというメリットは、デイリーユースでコバリオンジュエリーを着用したい方には朗報と言えるでしょう。

<h3>コバリオンジュエリーの販売会社は?</h3>

しかし現在コバリオンをジュエリー加工しているブランドは、合成宝石の分野で世界トップレベルを走る京セラのジュエリーブランドOdollyのみ。コバリオンチェーンやリング、ピアスなど地銀の美しさをたっぷり堪能できるラインナップが自慢ですが、色とりどりの宝石をセッティングしたコバリオンジュエリーは今のところ市場に流通していません。

宝石を使用したジュエリーではありませんが、アイルランドの伝統デザインであるクラダリング(両手でクラウンを抱えているアイルランド独特のデザインリング)を、ジュエリーデザイナー、ポール・コステロがデザインしたことは大きな話題を呼びました。(現在は天照、海神の2種類が販売されています。)

またイタリアのジュエラーBarberini  Bioielliも、コバリオンをジュエリー加工し、スタイリッシュなイタリアンブランドジュエリーとして発表しています。

2019年現在、コバリオンが日本国内でしか生産加工されていないこと。そして通常のジュエラーではその加工が非常に難しく量産ができないため、ワールドワイドでのコバリオンジュエリーの展開は難しいかもしれません。

しかし昨今はジュエリーライン以外にも、日本酒を嗜むための高級酒器やナイフ、時計への加工もされており、世のニッケルを含む金属アレルギーの救世主になっていく、そんなコバリオンの宿命は時間をかけながらも徐々に実現していくのではないでしょうか?

<h2>まとめ</h2>

ジュエリー加工用に適した素材とは言い切れません。しかし今まで金属アレルギーに泣かされてきた方にとって、コバリオンは新しい可能性の一つになってくることでしょう。なんといっても医療用金属として開発された背景、そしてメイドインジャパンで製造されている点は、私たち消費者からすると大きな安心にもつながります。

開発されてから既に数年経ちますが、生体材料やジュエリー以外にも様々な分野でコバリオンが使用され始めています。しかし他のレアメタルと比べても、コバリオンのジュエリー加工を承っているメーカーは京セラのみなので、フル、セミオーダーでの受注を承っていない点は残念ですが、これからの動向に要注目な新世代の金属として今後の展開には注目大と言えるでしょう。