今までスペインの一押しブランドとして「Carrera y Carrera」や「MISUI」を取り上げてきましたが、今回は「Masriera」というバルセロナ発のブランドをご紹介したいと思います。

気軽にデイリーユースできるジュエリーとはまた違う、これぞミュージアムピースと呼ばれる作品がズラリ。Masrieraが歩んだブランドヒストリーから、一目でMasrieraとわかるその特徴、そして気になるお値段までを徹底解説!

カタルーニャの風、そんな目には見えない空気を感じる、それがMasrieraのジュエリーの魅力なんです。

http://www.masriera.jp/(アイキャッチ画像マリエラ日本公式サイト)

バルセロナ随一のハイジュエラーMasrieraとは?

以前ご紹介したMISUIもバルセロナが誇るジュエリーブランドですが、新旧で線引きをすればモダンラインのジュエリーになります。

今回ご紹介するMasrieraは約200年ほど前まで遡る、カタランジュエリー(カタランとはカタルーニャ出身者、カタルーニャ語を意味します)を代表するクラシカルジュエリーブランドです。

日本での大衆的な知名度こそ高くはありませんが、通のジュエリーマニアにとっては眉唾物のジュエリーブランドMasriera、それではそのブランドの歴史、魅力について紐解いてみましょう。

Masrieraと書いてマリエラ!Masrieraの歴史

Masriera、スペインでは知る人ぞ知る名ジュエラーとしてその名を轟かせています。とはいってもバルセロナ発祥のブランドなので、首都マドリードよりはカタルーニャ地方で大変人気のあるブランドです。

Masriera、そのままローマ字読みすると「マスリエラ」ですが、「マリエラ」と読むので、お間違いのないように!

このMasrieraは1839年、Josep Masriera y Vidalが最初の工房をバルセロナに開いたのが始まりです。初代Masrieraは優れた銀細工職人、彫刻士であり、バルセロナの金銀細工の発展に貢献した人物として知られています。

カタルーニャやアラゴン地方の展覧会でジュエリー作品を出品し、サラゴサで開催された
展覧会では、彼の作品が受賞するなど、Masrieraブランドの知名度を上げることに成功。

彼の息子たちFranciscoは画家として大成し、Joseも父と同じように金銀細工(画家としても活躍)として作品を残し、Masriera本店を拡大移転。そのブランド名もJoyeria y Plateria J Masriera e Hijosに改名して親子で再スタートを切ります。

その後初代Masrieraの二人の息子たちは、別の工房を稼働させ、1888年にはバルセロナ世界博の宝飾、銀細工部門で金賞を受賞。しかしMasrieraの名を世界に轟かせたのは、Joseの息子であるLuis Masrieraであり、彼の代から様々なセレブリティーや王室関係者を顧客として抱えるようになります。

Luis Masrieraとルネ・ラリック

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世界的に有名で伝統のあるジュエリーブランドは、家系図のほぼ大多数がおとなしくジュエリー業界にしっぽり浸かっているので、果たしてどこの代からそのブランドの存在力を発揮し始めたかが分からなくなることがあります。

つまり親が築いたブランドをいかに気持ちがよくて、気持ちの悪い、そんな二面性あるオリジナリティーあるブランド力に育て挙げるか、ということです。

Masrieraも代々画家、銀細工の家系で、初代、二代目ともにスペイン国内での実績作りには成功しますが、世界と戦えるブランドに誘導したのは、前述でも述べたように三代目Luis Masrieraです。

彼は父、叔父と同様に優れた金銀細工師、画家であり、パリ、ロンドンそしてジュネーブでジュエリーを学びます。Luis Masrieraが学び、そして現代に続くMasrieraブランドの特徴になっているエナメルの基礎リモージュエナメルは、彼がスイスはジュネーブでものにした最大の武器。

エナメルを日本風にいうと七宝ですが、ジュネーブで学んだリモージュエナメルを独自に発展させ、半透明のバルセロナ七宝と呼ばれるエナメル技術をジュエリーに応用する、それがLuis Masrieraが紡いだジュエリーの特徴です。

そしてLuis Masrieraが、アールヌーボーと呼ばれる美術様式に染まったパリで出会ったのが、ガラスの魔術師ルネ・ラリック。彼の優美な曲線、左右不対称性に動植物モチーフ……。

パリのアールヌーボー様式とルネ・ラリックの芸術作品、両者の影響が強く見られるLuis Masrieraのジュエリーは、スペインにおけるModernismoと呼ばれる芸術様式の中で爆発していくのです。

そして彼の作品の展覧会はバルセロナ、サラゴサの他にパリ、サンフランシスコにブエノスアイレスでも開催され大盛況を納めます。

トンボ、ニンフ、人魚に魔女、実際に存在するもの、空想世界でしか見られない生き物、それらをゴールド地に七宝で彩色する。彼のエレガントな七宝作品は世界中でコピーされ、そしてMasrieraブランドの基礎となり現代に伝わっていくのでした。

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王室、皇室にも贈られる最高品質の七宝ジュエリー

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三代目Luis Masrieraによってその独特な世界観が開花したLuis Masriera。彼の作品そして、現在のMasrieraブランドは、世界のセレブリティーや皇室に献上される、最高品質のカタランジュエラー。

Luis Masrieraはスペイン王妃Victoria Eugeniaの婚約祝いにブーケ入れ、戴冠用の王冠も制作しています。しかし残念ながら結婚祝いの王冠は、現在行方不明とのこと。

またLuis Masrierは、ジャポニズムの影響を強く受けたことでも知られていますが、皇室への贈り物として美智子皇后に、素晴らしい七宝とサファイアのブローチを献上しています。

スペインと日本は1613年に支倉常長がスペインに渡り、翌年スペイン王に謁見して以来の長い歴史を共有していますが、2013年にはそれを記念して慶長遣欧使節団を乗せたサン・フアン号を模したジュエリーも作られました。

至高のバルセロナ七宝!日本でも購入可能?また気になる値段は?

本当に人の心を打つジュエリーというものは、実際それを目に取り、そして着用した時にハートでその美しさを感じるもの。しかしMasrieraのジュエリーは、もはや実物を目にすることなく、画像でもその卓越したエナメル技術、まるで絵画を見ているかのような物語性を、画面を通じて感じ取ることができます。

ジュエリーというよりも美術作品といった方がピンとくる、そんなMasrieraのジュエリーですが、果たして日本でも購入できるのでしょうか?ここでは気になる値段と共に購入方法に関して解説していきたいと思います。

モダン物は東京、大阪の直営店で購入可能!

スペインブランドは日本市場への上陸と徹底を繰り返しているようにも見えますが、Masrieraは1993年に日本上陸を果たして以来、多くのジュエリーファンに愛されています。

東京では日本橋高島屋に東京店、大阪高島屋には大阪店があるので、バルセロナに飛ばずしてMasrieraジュエリーを購入可能です。

日本で購入できるラインは指輪、イヤリング、ブローチにペンダントが中心ですが、小柄の作品でも「あぁ、これぞMasriera」と思わず頬ずりしたくなるThe Masrieraジュエリーばかり。

気になる価格はHPでは公開していませんが、おおよそ30~150万円程度。お買い得ラインとは言えませんが、Masriera3代が育んだカタランジュエリーの本髄を感じられる作品としては、決っして高すぎるとは言えないはず。

七宝ジュエリーの取り扱いには注意が必要ですが、モダンクラシカルのカタルーニャジュエリーの魅力は、目で見て、そして着用しても楽しむ、それはきっとあなただけのプチアートピースになることでしょう。

Masrieraのアンティークピースはオークションで!

日本直営店以外にもUsed作品はオンラインでも購入可能で、新品と比べてかなりお得に購入可能です。Masriera作品は三代目Luis Masrieraの特徴を今に引き継いでいるジュエラーなので、現代物でもアンティークな雰囲気が漂います。

しかしながら現在Masriera一族の本物のアンティークジュエリーは、いわゆるサザビーズ、クリスティーズなどの世界的オークションハウスでも高額取引される人気商品。Luis Masrieの作品になると、数万ユーロに届く価格で落札されることもしばしば。

それこそ手の届かない金額なので、まずは現代に流通するモダンMasrieraでグッと我慢。それでも存分にMasrieraの七宝技術の素晴らしさを実感するはずです。

まとめ

今回はバルセロナのブランドジュエリーMasrieraをご紹介してみました。日本での人気はあまり高いものではありませんが、その芸術的センスはピカイチ!特にアールヌーボー様式に造形の深い方にとっては、眉唾物のジュエリーになることでしょう。

日本でも購入することは可能ですが、バルセロナの本店は1915年に開店したガルシア通り沿いの歴史あるビルにあり、Moderinismoの様式を全身で感じることができるので、バルセロナに訪れる機会があれば、ぜひ足を運んでみてくださいね!