6本爪のティファニーセッティング、高貴なブルーのボックスに収まったティファニーのエンゲージリング。そして4C要素と同様に、その品質を約束するダイヤモンドの評価要素ブリリアンス。

ダイヤモンドジュエリーの品質、人気共に不動の地位を誇るティファニーですが、2019年1月9日、宝飾業界を揺るがす新たな声明を発表!

今回は高級宝飾品メーカーティファニーが宣言した、ダイヤモンド原産地公表、そしてその背景にあるダイヤの闇歴史について、ジュエリー初心者にもわかりやすく紐解いてみたいと思います。

ティファニーが英断したダイヤの原産地情報開示とは?

透明性といえばクラリティ、ダイヤモンドの品質を決定する4C要素の一つです。しかしダイヤモンドほど、その採掘に関して怪しい匂いが充満している鉱物はありません。

今回アメリカの宝飾メーカー、ティファニーが発表した声明は、そんなダイヤモンドの原産地情報を公開するという、ダイヤモンドの透明性に関するものです。

ここでは、ティファニーの歴史的公表の詳細ついてみていきたいと思います。

個々のダイヤモンドの詳細が追跡可能になった!

ティファニーの発表によると、2019年1月9日以降に調達されるダイヤモンドは、地銀にセッティング可能な重量0.18カラット以上の場合、個別に原産地情報を確認することができるようになったそうです。

つまるところ、レーザー刻印が可能なカラットのダイヤモンドに、それぞれのシリアルナンバーを彫り、そこから各々の原産地情報を確認することができるようになりました。

1月9日以降に流通するダイヤモンドは、既にそれらが産出された国や地域情報が管理されているので、カスタマーセンターを通して、各々のダイヤモンドの流通経路を消費者が知ることができるようになるのです。

またティファニーのエンゲージ・ウェディングリングや、その他のダイヤモンドジュエリーの原産地は、直接ティファニー店舗のディスプレーでも確認できるようになりました。

通常ダイヤモンドはどこから来たものですか?とジュエラーに尋ねても、笑顔でお茶を濁して詳細は分かりませんが、アフリカ産です……。と答えるのが常であったダイヤモンド原産地情報。

ダイヤモンドの原産地にこだわる消費者はあまり多くはないと思いますが、こうしてダイヤモンドが育まれた情報をきちんと提示できるジュエラーというものは、やはり素敵ですし信頼を置けますよね!

ティファニーのダイヤモンドにかける情熱は海よりも深い、その愛の大きさが公表されたニュースですが、この発表はもちろん単なる思い付きではありません。

20年以上にわたるダイヤモンドの発掘調査、カット、研磨に対する研究と投資を行ってきた、その最終成果が今回の原産地開示という、ダイヤモンド発掘に関する透明性だったのです。

ダイヤモンドのカット・研磨場所も明らかになる!?

ダイヤモンドの原産地情報か……ふーん、で終わってしまう方も少なくないと思います。しかし現在他社のジュエリーブランドでダイヤモンドの原産地を厳密に管理し、顧客へ情報提供をしているのは皆無。

現在ティファニーではロシア、オーストラリア、カナダの他にナミビア、ボツアナ、レゾト、南アフリカなどに工房を持っており、2020年以降にはカットや研磨の加工場所までもが消費者に提供される予定です。

どんな流通経路で、最高の煌きを生むクラフトマンシップが、どこで施されたかが判明する。私たちとっては、何気ないプラスアルファの情報でしかありませんが、徹底した情報公開を元にダイヤモンド提供を行う、ティファニーの起業精神には頭が上がりません。

ティファニーを動かした紛争ダイヤモンドの存在!みんなは知っていた?

美しいものにはとげがあると言いますが、ダイヤモンド取引の裏には、血生臭い戦争の匂い、そして過酷な強制労働の影が渦巻いているのです。

ここではティファニーの新しい取り組みの要因となった、紛争ダイヤモンドについて考えてみたいと思います。もしかしてあなたの指元で輝いているそのダイヤモンド、実は内戦の資金源として売買されたものなのかもしれません……。

そもそも紛争ダイヤモンドってなに?

ティファニーは主にボツワナ、南アフリカ、カナダ、ロシア、ナミビアの鉱山からダイヤモンドを仕入れていますが、基本これらの国から採掘されるダイヤモンドは、人権、倫理そして平和の三大原則に則るダイヤモンドでなければなりません。

???と思われる方も居るかもしれませんが、簡単に説明すると、ダイヤモンドは内線真っ只中の国々で発掘されることも多く(アンゴラやシエラレオネなど)、これらの国で発掘されたダイヤは、非合法な組織による紛争資金に使用された過去があります。

ダイヤモンドに限りませんが、特に安定した市場価値のある鉱物などは、武装集団や政府軍がダイヤを武器に変える傾向が強く、それと同時に強制労働の温床になっている場合も少なくありません。

例えば政府と反乱軍がダイヤモンド鉱山をめぐり争う、そして密かに外国へと運ばれたダイヤモンドが内戦費用に充てられる。そしてその採掘作業に現地の大人が強制動員され、まだ思春期前の子どもが兵士として戦地に駆り出される、実際にアフリカの貧困諸国ではこのような悲惨な出来事が起きていたのです。

このような流れで紛争の種になり、人権を踏みにじる形で採掘されたダイヤモンドを、血塗られたダイヤモンド、または紛争ダイヤモンドなどと呼んでいます。

何気なく薬指に着けていた大粒ダイヤモンドの婚約指輪(または結婚指輪)が実は血で血を争うような国々で、武器購入の代価として売却されたダイヤモンドだったら……。

やはりダイヤモンドを愛する消費者にとっても、このダイヤモンドで人命が失われ、戦争の資金になったと考えると、ダイヤの輝きもなんだか曇って見えてしまいますよね!

今までダイヤモンドを扱ってきたジュエラーも紛争ダイヤモンドに関して難色を示してきたものの、その全ての産地を明確にしていくのは困難を極める作業。蚊帳の外から見れば、ただの採掘場所と思われがちですが、ティファニーの今回の英断はジュエリー業界の明るい未来を担う布石となっていくと言えるのです。

原産地証明書添付のキンバリープロセスが持つ問題点

例えばデビアス社などは自社の鉱山からいくらでも、明確な原産地のダイヤモンドを採掘できます。しかしティファニーの場合、慎重に仕入れする鉱山を厳選したとしても、そのステップで、いつのまにか怪しい出処のダイヤモンドが混入してしまうことも、きっとなきにしもあらず。

永遠の輝きを持つダイヤモンドが戦争資金に流れている、微塵でもそんな可能性があるとしたら……。ジュエリー業界はダイヤモンドを扱う以上、内戦、人権侵害と深くかかわっており、1990年代から国連が警告を出しており、2003年にはダイヤモンド取引における認証制度「キンバリープロセス」を設けました。

簡単にキンバリープロセスについて説明すると、「このダイヤモンドは紛争地域で採掘されたものではありませんよ!」という証明のことです。

このキンバリープロセス認証制度は一定の効果を表し、紛争ダイヤモンドの数は市場からほとんど姿を消したともいわれています。

しかしキンバリープロセスでは、現状ダイヤモンド原石の状態でしか追跡、認証ができないため、一旦加工ステップに突入してしまうと、もはやどこから採掘されたのか追跡は不可能。(原石だけでも、原産地を特定するのは難しいと思いますが。)

またダイヤモンド採掘に関わる人々の労働状況(賃金、健康管理や就労環境など)や、ぽっかりと開いてしまったダイヤモンド採掘のための穴が示すような環境問題に関しては、具体的対策を明示していないことも問題視されています。

数か月前には、キンバリープロセスにおける人権、腐敗防止などを、より重視する認証強化を採択したと耳にしました。

しかしいくらキンバリーシステムが整備されても、人口ダイヤモンドの台頭など、時代が変われど、ダイヤモンドには切っても切れないトラブルが続出していく、そんな予感がしてなりません。

まとめ

良くも悪くもダイヤモンド配給元デビアス社の影響が強い宝石の女王様、その輝きと刷り込まれるように固定概念化された市場価値。

今回ティファニーが出した声明により、初めてダイヤモンドが採掘される際に過酷な不当労働に従事している者がいること、そして外貨獲得が武器購入に使われる裏の側面を知った方も多いことでしょう。

ダイヤモンドジュエリーを購入するにあたり、ティファニー以外では消費者がその原産地を明確に認識することは難しいかもしれません。しかし、宝石の本当の価値を再考するためにも、ダイヤモンドの闇歴史にも視線を向ける大切さを知って頂ければ幸いです。