ダイヤモンドにはカラット、カット、カラー、クラリティーの4Cでその価値が決まります。もちろんダイヤモンドの良し悪しは鉱物的価値以外にも、ダイヤを選んだTPOや思い入れも心的価値を向上させる要素ではありますが、実はダイヤモンドには蛍光性という隠れた要素があるのをご存知でしょうか?
今回はダイヤモンドの眩い蛍光性、そしてダイヤモンドに負けず劣らず暗闇で光る宝石についてお話ししたいと思います。
光を放つ宝石と信じられてきた驚きの効能とは?
光を放つと文字で書いてしまうと、何もない空間で照明代わりになるような強い輝きを見せると誤解を与えてしまいそうですが、そうではありません。
簡単にこの現象を説明すると、ブラックライトに当てると強烈な光の輝きを見せる不思議な宝石の特性のことです。
ここではそれぞれの宝石が持つ化学組成が少し異なるだけで、様々な光を見せる宝石の不思議について迫ってみたいと思います。
なぜ宝石は光るのか?人類の歴史から読み取る発光の歴史
ルビーやサファイア、エメラルドのようなコランダムの鉱物などには、しばし暗闇で光るものが確認されています。これらの現象は鉱物に含まれるある種の元素が原因となり、蛍光もしくは燐光性を見せるのが鉄則です。
蛍光性とはいわゆるX線や紫外線下に置くことで、光を吸収した際に放出されるエネルギーを、別色色素として再度放出することで光を放つ現象です。また燐光性とは光源を断った後も持続的に暗闇で発光する現象を指します。
今でこそ科学的に鉱物が暗闇で輝く理由が明らかになっていますが、それそ中世の時代には、蛍光と燐光による宝石の輝きはオカルト的な迷信や幻想と結びつけられてきました。特にカボションにカットした赤色宝石の総称カーバンクルの蛍光、燐光性は歴史的にも、ノアの箱舟の時代から語り継がれています。(ノアの箱舟内の暗闇を照らすランタンとして、ガーネットが用いられたという伝説は、このガーネットの蛍光性を利用したものなのでしょう。)
その当時から放射線との関連や宝石を燃焼することで発する燐光性の研究は行われていましたが、これらの光る宝石は敏感な神経回路を持つ人間に顕著に表れるという通念と結び付けられることも多かったようです。
ちなみに太古の時代から、光る宝石は商売または神聖を高める要素として結び付けられ、故意に燐光現象を起こすある種の魚介類の胆汁や内臓等で細工を施し、発光宝石を人為的に作成していたことも少なくありませんでした。
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光る宝石とそれぞれの逸話が面白い!
例えば遊色効果が美しいオパールは、ブロンドの髪を美しく保持するという伝承があったり、その名の由来となった「Ophthalmos(目という意味)」という単語が邪眼を連想するということで、逆に不幸を呼ぶ石の代名詞になったりと……。宝石と迷信は深い関連性を持っています。
その他の興味深い伝承としては、イギリスロマンスの名作「ホーン王の剣」で王女リムニルドとの愛の物語が挙げられます。王女と恋落ちたホーンが、リムニルドの父王から追われた際に、リムニルドからダイヤモンドの指輪を手渡されます。
ダイヤモンドが光らなくなり、ペールブルーに光った時は、リムニルドの心が変わった時。真っ赤に燃える炎のような光を見せた時、それは貞節が破られた時と……。どちらにその光が変化してもホーンにとっては喜ばしくない結末ですが、ホーンはダイヤモンドの光が弱まり始めたその時に、王女の元に舞い戻り、彼女が望まれない結婚をするこを妨げることに成功し、二人はハッピーエンドになりました。
ダイヤモンドに限らず宝石が赤もしくは青く光る時は、何か不吉な出来事の前触れと捉えられることが多いようです。
またルビーの蛍光性が弱まり、徐々に色味が弱まった場合は災難が迫り来る信号として捉われたり、闇夜に輝くカーバンクルで橋を照らそうと思った牧師が、果たしてどうやれば輝くカーバンクルをたんまり見つけられるか?について考えすぎて、それらが見つかる前にやせ細ってしまった話しなど、光る宝石に関する記述は詩集「リティカ」を始めあちらこちらに点在しています。
特にカーバンクルは教会内の松明代わりとして機能したり、聖遺物として利用されたと記述されることは多く、教会を訪れる信者の心にイエス・キリストに対する畏敬の心を増長させる効能を生んだことは言うまでもありません。(果たして本当にカーバンクルが教会内を照らしたり、人の心を動かすような蛍光性を見せたのかはもはや知る由がありませんが……。そこはロマンで取り繕いましょう!)
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ブラックライトを当ててみよう!ダイヤモンドの蛍光性でジュエリー選びしてみる?
光る宝石の原因や逸話について紹介してきましたが、ここでは宝石の王様ダイヤモンドと蛍光性の魅力について徹底的にメス入れてみようと思います。
まさかダイヤモンドが暗闇で光を放つなんて、宝石の奥深さ、ダイヤモンドの美意識の高さを改めて感じさせてくれますね!
ダイヤモンドが蛍光性を持つ訳とその価値について
ダイヤモンドがX線もしくは紫外線下で、それこそ夜空に浮かぶ篝火のように鮮やかな閃光を放つとは誰が想像できたことでしょう?しかしダイヤモンドの閃光に関しては、意外と古い歴史があり、18世紀の科学雑誌「ジャーナル・デ・サヴァン」には、光るダイヤモンドの実験結果が考察されています。
その実験結果によると、ダイヤモンドを布や木片で擦ると光を発する摩擦ルミネッセンスについて言及しており、またイエローダイヤモンドについての実験は繰り返され、その蛍光性が実証されていたそうです。
ブラックライト下ではなく、陽光に反応し、暗闇で明るい光を呈するダイヤモンドは多くはありませんが、18世紀の時代から、ダイヤモンドの輝かしい蛍光性に関心が寄せられていたとは驚きですね。因みに紫外線が強い地域では、屋外にいたとしても、ダイヤモンドの発光が目視でき、その煌めきをより強くみせます。
ダイヤモンドが蛍光性を示す理由は決して魔術的な要素は一切なく、原石が長い間地中深くで高温高圧化に晒されたことによる、結晶構造の変化によるものだと言われています。
ただ基本的に蛍光性がある=ダイヤモンドの価値が高まるわけではありません。様々なカラーダイヤモンドがある中でもブルーダイヤモンドのような希少なカラーダイヤと強い蛍光性を示す場合は、より煌めきが強く見られ、評価も高まるなどの例外はありますが……。
ダイヤモンドの結婚・婚約指輪選びは前述の4Cが基本になりますが、敢えて4Cはひとまず置いておいて、蛍光性の強さや配色でダイヤモンドを選んでみるのも面白いかもしれません。
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蛍光性の強さ、色調は鑑定書でグレーディング可能!
ダイヤモンドの鑑定書(グレーディングレポート)では、前述の4Cの他に蛍光性に関してのデーターに関しても言及されています。つまり蛍光性の強さに関しては、①None、②Faint、③Medium、④Strong、⑤Very Strongの5パターンで評価、色調は①Blue、②Bluish White、③Green、④Yellowish Green、⑤Yellow、⑥Orange、⑦Pinkの7パターンで評価されます。
そしてこれら2つの蛍光性を総合評価Fluorescenceとして、①Very Strong Blue、②Strong Bule、③Medium Blue、④Faint、⑤Noneで記されますが、通常の私達がダイヤモンド!と喜んで飛び跳ねるものは、NoneもしくはFaintの蛍光性のものを指します。
4C以外にこれだけの要素で蛍光性に言及されていますが、どうしてもカットにカラット、クラリティーばかりに目が行きがちで、蛍光性にほとんど関心を持たない方も少なくありません。
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【値段は?】蛍光ダイヤモンドの結婚・婚約指輪という選択肢
4Cの観点からはダイレクトに蛍光が評価されませんが、希少性から考えたら、なかなかユニークな新婦へのプレゼントとなるのが蛍光ダイヤの強み!
通常のジュエラーはあまり蛍光性のあるダイヤモンドを扱っていませんので、まずは彼女の好みのカラーや大きさにあった蛍光ダイヤモンドのルース選びから始めましょう。それこそブラックライトの中で光る蛍光色はホワイト、ブルー、グリーンにパープルなどまるでレインボー並の配色があるので、オリジナリティー>4Cの最高レベルのオリジナルリングを作成可能です。
蛍光ダイヤモンドもピンキリですが、5万円以下のダイヤルースも多く、プラスαの地金代と加工代合わせて、20万円程度で蛍光ダイヤの愛の証をプレゼントすることができます。ダイヤモンドに何を求めるのか?品質なのかそれともオリジナリティーなのか?新婦の好みも異なりますが、真ん中から少しずれた観点の結婚・婚約指輪も、大いにアリかもしれませんね!
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蛍光ダイヤモンドのメリット・デメリットとは?
蛍光ダイヤモンドはその蛍光性が強ければ強いほど、価値が高まらないと言われています。特に蛍光性が強いVery Strong Blueの場合は、陽光下での輝きが濁ったように見える場合があり、GIA評価のクラリティーに悪影響を及ぼすことも報告されています。つまり投資目的または持ち運べる財産としてダイヤモンドを選ぶ場合には、蛍光がNoneのものかFaintのものを選ぶ方がベターと言えるでしょう。
蛍光性を示すダイヤモンドのメリットとして挙げられるのは、蛍光ダイヤモンドは天然にしか見られない唯一無二の現象なので、=本物と保証されることです。多くの人口・疑似ダイヤモンドが氾濫している昨今、蛍光性があるというだけで、天然保証が確証されることは、消費者にとっては安心材料と言えます。
また個人的な範疇にもよりますが、陽光の中で白く輝くダイヤモンドを楽しみながら、お洒落なバー、クラブにカラオケなどのブラックライト下では、強い輝きを見せる蛍光ダイヤは、どんな大きなカラットの宝石よりも強い存在感を見せつけることは間違いありません。
好みの問題はありますが、そんな蛍光ダイヤを楽しむワクワク感こそが、一番のメリットになるのかもしれませんね!もしかしたらあなたのお手持ちのダイヤモンドネックレス、ピアスにリングが暗闇でぼんやり光るかもしれないので、ブラックライト片手に実験してみるのも楽しいことでしょう。
まとめ
今回は光る宝石、つまり鉱物の蛍光性についてお話ししてみました。なんだか遠い昔に置いてきた夏休みの自由研究を覗き込んでいるかのような、ノスタルジックでありながら、どこかワクワクする子ども心を再発見したきがします。(笑)
ダイヤモンドにルビー、エメラルド……etc、様々な宝石は、蛍光性、燐光性を見せるタイプのものも多いので、いつもの単純明快なカット、カラットに依存する宝石選びに飽き飽きした時は、新感覚の暗闇で光るジュエリーを身に着けて楽しんでみるのもオススメです!