ジュエリーを投資の対象、つまりその資産価値に着目して購入している人は多くないと思います。その装飾性の高さが故、ジュエリー=ファッションという風潮が絶えませんが、今回はあえて資産価値という難しそうな側面から、ジュエリーの魅力を徹底解剖。そして拙いスペイン語を駆使して、独断と偏見でスペインのジュエリー・貴金属の資産価値についてもお伝え出来ればと思います。

ジュエリー・貴金属は資産運用の対象になり得るのか?

中古品のジュエリーを購入した方も多いと思いますが、新品と比べて随分お値打ち価格ですよね?そして手持ちのジュエリーを売却したことがある方にとっては、そのあまりに低い査定額に唖然とした方も多いと思います。

なぜにジュエリーは高価なのに、こんな安い価格でしか売れないのか?ジュエリーは資産価値として向いていないのか?こんな素朴な疑問について、考えてみたいと思います。

ジュエリーに資産運用を期待するべからず

100万を超える大枚はたいて購入したダイヤモンドリングが、質屋さんで換金しようとしたら、数万程度の価値しかつかなかった。購入する時は高くても、売却する時に、その価値がガクッと下がってしまえば、もはや資産運用の対象にはなりえません。

ジュエリーとは2/3の価値はそのジュエリーを身に付け、心も装いを豊かに、そして自己満足を埋める為の値段。そして残りの1/3が、人手に渡る時に決定するジュエリーの価値といっても過言ではありません。

数百年の歴史を誇る古のジュエリー、特にブランド品や作家物のアイテムは、その時代時代の流行や人気などを反映して上下しており、尚且つアンティークジュエリーとしての市場が確立されています。特に宝石に人口処理を行っていない原石が使われるアンティークジュエリーは、価値あるジュエリーとして市場を巡回する為、価値が極端に下がることはありません。

しかし反対に祖母から受け継いだエメラルドの指輪や珊瑚のネックレスや数十年前に購入したジュエリーが、当時の購入額と同等もしくは、それ以上の価値がある相続資産となることは多くはありません。つまり現代の日本の市場を考えると、単に購入額が高かったから、またはブランドのジュエリーだから資産的価値があるとは、決して言えないのです。ジュエリーや貴金属をお金への換金性として捉えるならば、私達消費者がその地銀の純度や宝石の種類を、将来的な視野で見据えて選び、購入する必要が出てきます。

ジュエリー・貴金属に資産価値を求める際に覚えておくべきこと

ジュエリーの持ち主は20~30年で変わると言われています。つまり1世代で家族や親戚、はたまた赤の他人に渡る可能性がとても高いのです。

それがどんな形で受け継がれていくかはそれぞれ異なりますが、前述の通り、その価値が購入値を上回る、つまり資産価値を形成することは多くはありません。

それでは将来ジュエリーや貴金属に資産価値を見出したい場合、どんな点に留意してジュエリーを選べばいいのでしょうか?

資産的価値を左右する要素まとめ

タンスの肥やしじゃありませんが、長いあいだ日の目を見ずに眠っているジュエリーも少なくないことでしょう。さてあなたのその大切なジュエリー、あんな思い出、こんな思い出が詰まったそのジュエリーは、どれだけの価値があるのか、それはこんな要素によって決定されるのです。

①希少性の高い宝石を使用しているジュエリーまたはルース

②カラットが大きく、不純物が少ないなど、鑑賞に値する美しさを誇るもの

③売買市場が形成されている宝石、貴金属であること

④経年劣化などでその審美性が損なわれないもの

⑤世界的に伝統があるハイジュエリーブランド製品である

大きく分けて上記のような要素が、宝石、貴金属を含めたジュエリーの資産価値を高める要素となっています。これらの全てを満たしているジュエリーは両手で数えるより少ないと思いますが、つまるところ、宝石の美しさを含めた質・希少性、そしてジュエリーとしての装飾性の高さが優れているものは、資産的な価値があるジュエリーと言えるでしょう。

ダイヤモンドの価値はこれから継続的にあがるのか?

ジュエリーはどんな災害や戦争などが起きても身につけて逃げることが出来るので、絵画や骨董品と異なり、比較的換金性も携帯性も高いツールとなっています。

そしてジュエリーの資産価値を考えた時にまず思い浮かべるのが、ダイヤモンドです。ここではダイヤモンドが将来的に投資対象になるのか否かについて、クローズアップしたいと思います。

ダイヤモンドは昨今、ゴールド、プラチナと比べても、投資対象として急激な伸びを見せている点は見逃せません。以前コラムでも執筆しまたが、日本国内だけでなく世界中のオークションハウスで、アンティーク~モダンのダイヤモンドジュエリーやルースの超高額売買が続いています。

大恐慌などでその市場価値が落ち込むことも勿論ありますが、例えば今話題の仮想通貨などと比べたら、雲泥の差でその回復力と安定感でダイヤモンドに勝敗が上がります。持ち運べる芸術品と揶揄されるように、その優れた携帯性も投資対象として人気な理由なのです。

ただしダイヤモンドの価値はCut、Clarity、Carat、Colorのいわゆる4Cで決まる為、どんなダイヤモンドでも現在~将来への投資対象になるわけではありません。どんなにクリアで素晴らしい透明度を誇っていても、0.01カラットの極小なダイヤモンドは人気が出ないのです。欲張りな私達はやっぱりそれなりの大きさの存在感があるダイヤモンドを身につけたいですよね?そして無色透明なダイヤモンドと同等に、ピンクやブルーなどのファンシーカラーのダイヤモンドで周りと差別化をしたいと、潜在意識の中で感じ取るもの。

一昔前、デビアス社が牛耳ってたダイヤモンドの価値は他の貴金属や宝石と比べて、下落しにくく、そして必死の宣伝効果もあり、世界中の女性達に愛され続けています。その為、今後は金、プラチナ以上に投資対象として人気が出てくると予想され、資産価値という4文字を意識するのならば、レベルの高いダイヤモンドにターゲットを合わせるのも1つの手段になってくるでしょう。

小売店で購入すると高くつきますし、ebayなどでは偽物がまかり通っている為、投資対象としての価値があるダイヤモンドは、世界に点在する中小規模のオークションハウスでの入札が安く購入するポイントです。(サザビーズ、クリスティーズ、ドロテウムやボンハムズなどの有名ハウスは、素人の手には追えない価格まで入札が続くのでオススメいたしません)

ゴールド・プラチナは今後も期待できる投資対象になるの?

友人にコツコツとゴールドを積み立てる自称投資家の女性がいます。「儲かっているの?」と聞くと、苦笑いを浮かばて、ゴールド投資は自己満足みたいなものだからと胸を貼るのです。つまりは儲けは出ていないけれど、金、銀、プラチナに現物投資をすることに意義を見出してしまっているパターン。

確かに金は市場も大きく、今の世界情勢がとんでもないベクトルを向いても、価値が急降下することはあまり考えられず、安定した資産形成が期待出来ます。

銀はアンティークシルバーなどは人気があり、価格も高騰しますが、銀自体の市場が小さい為、投資対象として考えると不安材料が満載です。

圧倒的人気を誇るプラチナも工業用で使われる場合が多く、最近は金より価格が下がってきており、希少性はありますが、金と比べても価格の上下が激しいのが特徴的。

最近はネット証券で毎月1000~3000円程度で金の積立が出来る時代になりましたが、株などと異なり、億り人のような莫大なハイリターンを生むことは難しいのが現状です。あくまで保有し続けることに意義があり、そして現物を保持出来る点に魅力があるので、あまりに損得を意識しすぎるのは禁物なのかもしれませんね。

スペインにおけるジュエリー・貴金属の価値と資産運用について

簡単に宝石、貴金属含むジュエリーの資産価値についてお話ししましがが、ここでは私が住むスペインのジュエリー業界についてご紹介したいと思います。

スペインのジュエリー・貴金属売買は危険がいっぱい

スペインにはありとあらゆる都市、街角に「Compro Oro」という看板を掲げたお店を見かけます。Comproとは売却という意味で、Oroは金を指す単語で、その名前の通り貴金属を売買するスペインの公設質屋です。スペインの15都市に点在する「Compro Oro」以外にも、多くのジュエラーや質屋があります。

欧州随一の失業率と不況にあえぐスペインは、とにかく現金を欲しがります。親から子どもに受け継がれてきたジュエリーに、百貨店やオンラインで購入したジュエリーは、お気に入りを除き、その殆どは「Compro Oro」で現金として換金され、生活費へと消えていくのです。

スペインの貴金属換金は自由市場なので、地銀の相場を見ながら、その店、立地、店主の鶴の一声で、地銀の売買価格が瞬時に変化することもあります。またゴールドやプラチナの重さを計量する図りも、ある種の仕掛けが施され、実際の重さより軽く表示されることも少なくないので、高価なジュエリー、貴金属を売却する際には注意が必要です。

その為ジュエリーや貴金属売却を考える場合は、キッチンにある図りで大まかなグラム数を図り、World Gold Councilなどで重さに準じた値段を、事前に知ることが重要になってきます。

また純度の低い9Kのゴールドは売却することが出来ない場合が多く、通常は18K以上のゴールドの売買が行われています。

スペインの場合は基本地銀のみでの買取になりますが、そのジュエリーの来歴や価値、ブランドを示すものがある場合に限り、地銀に若干上乗せした価格で売却出来る場合も稀にあるようです。(誰もが知る超有名ブランド、サインドピースや鑑定書がついているケースに限ります)

通常スペインの貴金属市場は日本と比べて適正な売買価格が設定されない場合が多いので、最近の傾向としてebayなどのネットオークション、またはwhalla popと呼ばれる個人売買サイトでのジュエリー売買が盛んになっています。

最後にダイヤモンドやその他の輝石のジュエリーを売却する場合は、上記のような質屋ではなく、有名ジュエラーまたは宝石の買取に特化したWEBサイトで売却するのが一般的です。

資産運用in スペイン

スペインにはヒターノと呼ばれるジプシーが一種独特な文化を構成しながら生きていますが、彼らはゴールドが大好きな人種として知られています。

家賃も払えずパンを買うお金もないスペイン人がいる一方で、彼らヒターノは黄金で埋め尽くされた家に住み、ゴールドジュエリーを身にまとうのが大好きなんです。(ヒターノはスペイン社会で差別されており、高等教育を受けていない、または占い師などのある特定の仕事にしかつけないことも少なくありません)

話はそれましたが金に始まり金で終わる国がスペインですが、それでもスペイン内の金高騰は収まりません。先祖伝来のゴールド好きは不況な毎日でもやはり健在で、あちらこちらに金の売買を仲介業者が誕生し、市民は大切な結婚指輪や金歯・銀歯を売りにくるわけです。

投資対象としてはゴールド人気が高いスペインですが、主にインゴットの売買が盛んです。しかし前述のようにジュエリーの場合は、その純度に応じて値段が異なり、宝石の価値が殆ど加味されない為、ジュエリーを資産運用とするパターンはあまりありません。その殆どは数十~数百ユーロでネットで売買されてしまいます。

特にゴールドのインゴットの場合は21パーセントの付加価値税がかからず、ゴールドメダルやジュエリーの場合は課税されることもあり、特に富裕層にはインゴット売買が盛んです。

また最近はゴールドに変わりダイヤモンドが資産運用として人気を博しています。ゴールドと同様安定性が高く、昨今のダイヤモンド採掘料が減少していることも後押し、情勢が不安定なスペインでは注目を浴びているのです。スペインでは約4000ユーロ程度、1カラット以上の鑑定書付きのダイヤモンドが、投資だけでなくジュエリーとして楽しむ為にも購入されています。

勿論これらの現物投資に必死になるスペイン人は本当に一部の大金持ちだけで、一般市民はジュエリー・貴金属投資をすることよりも、グルメや旅行など少しの贅沢を楽しむ人が殆どなことも付け加えておきましょう。

まとめ

今回はジュエリーの資産価値という面に着目して、ジュエリーの魅力を再考してみました。綺麗!可愛い!の一言で終わりのアクセサリーも、芸術的な価値が高い本物のジュエリーも、なかなか資産運用の対象にはなりにくい現実には驚きを隠せません。

資産運用としてはやはりゴールド・プラチナが鉄壁の運用対象なのは、今も昔も変わりませんが、これからの資産運用を考えている方は、十分これからの動向を見極める目を持たなくてはなりません。

どちらにしてもジュエリーは五感でその美しさを楽しむべきで、その点ではどんな投資対象よりも、私達の心を豊かにしてくれることは言うまでもありませんね。